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6. シェフィールド・シティ・ホール(1981年)

今は引退したこの会場の支配人、ミセス・キャリックだが、現役中は公演後の精算は彼女が自ら担当していた。破損した座席その他、会場側の被った損害を計算して、出演者のギャラから差し引くのだ。談判の相手はポール・ダーウィン、僕達のプロモーター代表兼ツアーマネージャーだ。精算を済ませ、バンドのいる楽屋にやって来た彼が、やれやれ仕事も済んだし、ビールでも飲んでリラックスできる...と一息ついているところへ、既に毛皮のコートを羽織り、帰宅の準備もできたミセス・キャリックが再度登場。(ポケットからは家で待っている旦那さんのためのギネスが2缶覗いている。)

「ちょっとこちらへ来て下さいな!」
「いったい何ですか?」とポール
「男性トイレが破損されているのが見つかったので」
「トイレは既にチェックして、全く問題なしじゃなかったですか。」

それ以上何も言わず、人さし指で呼び寄せるミセス・キャリックに、ポールは「チッ」というジェスチャーと共にビールをテーブルに置き、「すぐ戻ってくるから」と言って席を立つ。

「ほら」と男性トイレを見せられ、そこら中を見渡すポール。長い一日の仕事がやっと終わり、ビールを飲むのを楽しみにしていた彼は、かなり苛立っている。.
「ミセス・キャリック、正直に言わせてもらうと、さっきチェックした時と同じに見えるんですけどね。タオルもきれいなままちゃんと壁にかかってるし、床には血の跡も誰かが吐いた跡も残ってないし、鏡にヒビも入ってないでしょう。壊されたものは何もないじゃないですか。目に見える損害はどこにも見当たりませんよ。きれいなままの便器が12個並んでいるだけです。」
「そう、その通り」とミセス・キャリックが応える。.
「え? だからどうなんですよ?」と、うなるポール。
「いやね、この12個の便器なんですけどね、いつもは間に壁があって、個室になってるんですよ。」


(c) Ian Gillan 1996

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