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21 Gunga Din(Gillan)Ian Gillan のアルバム Dreamcatcher より 父の額にキスをしようと、かがんだ時、顎の辺りがなんか変だと気付いた。 ヒゲを剃ってなかったのだ。いつも衛生や身だしなみに気を付けていた父。興味津々で毎朝のように側で立って見ている僕に、その過程、その儀式を説明してくれた父。まず普通の石鹸で顔を洗うんだよ、それから熱ーいお湯で、我慢できる限り熱いお湯で、パーモリーヴのひげそりクリームをブラシで泡立てて...このブランドのひげそりクリームは今ではもうない。そうしてカミソリでこうやって...。ヒゲを剃った後の父の肌は僕のよりもずっとなめらかに見えた。 時々父はかがんで、僕の顔にクリームを塗って、刃を抜いたレイザーで「剃って」くれた。うーん、最高! そんな後にいつも「お前は俺よりも男前だよ、ガンガ・ディン」と言ってくれるのだった。 何故ヒゲが気になったんだろう? その前に父を見たのは前夜11時頃、ちゃんときれいにヒゲを剃った顔で僕のホテルから自宅に帰る時だった。その後1時間以内に、運転中の事故で死んでしまった。そうして12時間後、50マイル離れた死体安置所で見た父の顎には、無精ヒゲが生えていたのだった。 はい、確かに父です、ウィリアム、はい、そうです、はい。身元確認の手続きの間ずっと、どもったりたじろぐことばかり。すみません、それよりもどうかヒゲを剃ってやって下さいませんか? このままでは... 平静を保とうと後ろを振り向く時、このままではどうなるっていうんだ?! という質問が頭に浮かぶ。 という訳で、死んだ男の顎に生えてるヒゲ、漁師の歌みたいに聞こえるかもしれないが、あの時僕の中での父の存在が凝縮されたのだ。 この曲を "Dreamcatcher" で発表した際に説明として書いた文章が以上の通り。僕の精神の書庫の所蔵物の一部だ。残りの部分は、それ以外の夢想。 Gunga Din(Gillan)If the nets were full of holes I'll be true to you If you put into the history books I'll be true to you Through the whistlin' and the dancin' and the flyin' of the feet. My daddy was from Scotland I'll be true to you |
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